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東京高等裁判所 平成5年(行ケ)129号 判決 1996年10月17日

スイス国シーエイチー9000セント・ガレン カペレンシュトラーセ 1番

原告

コシラン アー・ゲー

同代表者

エルンスト・ウェグマン

ルネ・ブルニイ

同訴訟代理人弁護士

松尾和子

同弁理士

加藤建二

大島厚

大阪府大阪市中央区南本町4丁目2番5号

被告

ジャパン・マーカンタイル株式会社

同代表者代表取締役

濱田隆志

同訴訟代理人弁護士

村林隆一

今中利昭

吉村洋

浦田和栄

松本司

辻川正人

東風龍明

片桐浩二

岩坪哲

田辺保雄

主文

特許庁が平成1年審判第697号事件について

平成5年3月17日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

主文と同旨の判決

2  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

被告は、別紙記載のとおり「Cosilan」の欧文字をやや図案化してなり、旧商品分類第16類「織物、編み物、フェルト、その他の布地」を指定商品とする登録第1657773号商標(昭和56年12月17日出願、昭和59年2月23日登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。

原告は、昭和63年12月17日、商標法50条により、本件商標の登録取消審判を請求し(平成元年2月27日登録)、平成1年審判第697号事件として審理されたが、平成5年3月17日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年4月19日原告に送達された。

2  審決の理由の要点

(1)  本件商標の構成、指定商品及び登録関係は、前項記載のとおりである。

(2)  被請求人(被告)が本件商標をその指定商品である「織物、編み物、フェルト、その他の布地」について使用しているか否かについて審理するに、本件商標は、「綿、絹、あるいは毛織物生地」に被請求人の取扱いにかかる商品であることを示す標識として使用されていたことが、被請求人の提出した乙第7号証ないし第14号証(審決の書証番号)の各証拠に徴し、認めることができる。すなわち、乙第12号証「販売中の織物の実物写真」には本件商標と同一と認められる「Cosilan」の文字と共に被請求人の商号が商品タッグ中に表示されている。また、これを裏付ける資料として株式会社ウールン商会の証明書、物品受領書、株式会社エスター・ニュートンの証明書、物品受領書、株式会社ハマ・インターナショナルの証明書、物品受領書、キャピタル商会の証明書、物品受領書が提出されており、さらにまた上記4社と被請求人との取引の事実に関する大阪商工会議所の証明書(乙第11号証)が提出されている。

してみると、これらの証拠を総合して勘案すれば、本件商標が審判請求登録前3年以内に、日本国内において、使用されていた事実を認めることができる。

したがって、本件商標の登録は、商標法50条の規定により取り消すべき限りでない。

3  審決を取り消すべき事由

審決の理由(1)は認める。同(2)は争う。

本件商標は、審判請求登録前3年以内に、日本国内において使用されていた旨の審決の認定は、以下述べるとおり誤りである。

(1)  審決が上記認定の根拠とした乙第6号証の1、2(本訴における書証番号。以下同じ)の写真は、本件審判請求登録後に撮影したものであるうえ、上記写真については、被告が本件商標と被告の商号を明示したタッグを吊り下げた商品を、通常の商取引の状態において撮影したものとみることができない。したがって、上記写真に基づいて、被告が本件商標を使用していたものと認定することはできない。

このことは、乙第8号証の1ないし14についても同様である。

(2)  株式会社ウールン商会(以下「ウールン商会」という。)、株式会社ヱスターニュートン(以下「ヱスターニュートン」という。)、ハマ・インターナショナル株式会社(以下「ハマ・インターナショナル」という。)、キャピタル商会の各証明書、物品受領書、被告の請求書の信憑性については大いに疑問があり、到底、本件商標の使用の事実を証明するに足る証拠とはいえない。

乙第1号証の2ないし38(ウールン商会の物品受領書)は再発行にかかるものであり、もとは「Cosilanブランド」ではなく、「Cosilan’goods」の記載があったものである。すなわち、本来、Cosilan社の商品、すなわち「原告製品」という表示があったにすぎない。よって、これらの証拠により、被告が本件商標を使用したことを立証できるものではない。

乙第2号証の2ないし11(ヱスターニュートンの物品受領書)、第3号証の2ないし11(ハマ・インターナショナルの物品受領書)、第4号証の2ないし8(キャピタル商会の物品受領書)及び被告の請求書(乙第44、第45号証(枝番省略))に関しては、最も重要な輸出業者のインボイスがないこと、物品受領書と請求書が内容的に一致しないことからみて不自然であり、これらの証拠は真実ではなく、故意に作成されたものとみるほかない。また、当時被告が専らウールン商会との関係で原告製品の輸入業務及び代理業務を行い、両業務から約20%のコミッションを受領し、多額の利益を得ていたにもかかわらず、ごく微少の「COSILAN」商標を付した商品を他から購入して、ヱスターニュートン等に販売し、この利益を喪失する危険を冒していたとするのも全く合理的ではない。

これを要するに、被告が乙第1号証の2ないし38のような書面を勝手に書き換えて作成していた経緯からみても、上記物品受領書、請求書をもって被告が本件商標を使用していたことの証拠とみることはできない。

また、これらの物品受領書、証明書を添付して証明書発行を得たにすぎない乙第5号証の1ないし5についても同様である。

なお、乙第24号証ないし第37号証の各1、2自体は、本件商標の使用と関係がない。

(3)  さらに、乙第1ないし第4号証(枝番省略)により、本件商標の使用が形式上認定できたとしても、被告は、原告が原告の日本における総販売元であるウールン商会に商品を販売するに当たり、専らウールン商会に引き渡すための代理業務及び輸入代行業務という事務手続を原告のために行っていたにすぎない。すなわち、被告は、原告との関係においては、本来原告に帰属する本件商標が、原告の商品に、原告の出所として指標するために使用されていたものを原告の依頼に基づき、原告のために窓口として扱ったにすぎない。

したがって、本件商標の使用は、法律上、商標権者である被告による商標の使用と認めることはできない。言い換えれば、本件商標は出所として被告を表示するものとして使用されていないから、被告は、本件商標の使用を本人である原告に対する関係で、自己の商標の使用であると主張できないものである。

(4)  なお被告は、「Cosilan」の商標は被告の創作にかかるものである旨主張するが、原告の創業者であるマックス

クリームラーが1977年中に「Cosilan」の表示をつくり、同年12月5日には、すでに原告の会社名称として採択されているのであるから、上記主張は不当である。

第3  請求の原因に対する認否及び主張

1  請求の原因1及び2は認める。同3は争う。審決の認定、判断は正当であって、原告主張の誤りはない。

2  主張

(1)  被告は、本件審判請求の登録前3年以内に、原告から、また株式会社サン・ミエール(以下「サン・ミエール」という。)から綿捺染織物等を購入し、当該商品に本件商標を使用してきた。すなわち、

<1> 乙第1号証の2ないし38に記載のとおり、被告は、昭和61年3月5日から平成元年2月23日までの間に、原告から購入した綿捺染織物等の原告製品をウールン商会に販売したが、原告の商標と本件商標とは殆ど同じであるので、そのまま原告の商標を使用してウールン商会に販売したものである。

<2> 乙第2号証の1ないし11、第3号証の1ないし11、第4号証の1ないし8に記載のとおり、被告は、昭和61年3月20日から平成元年5月11日までの間に、サン・ミエールから購入した綿捺染織物等を、本件商標を使用して、ヱスターニュートン、ハマ・インターナショナル、キャピタル商会に販売した。

(2)  上記のことは、次の事実からも明らかである。

<1> 原告は1978年1月4日に創立し、同年2月3日に被告との取引を開始したが、1988年6月30日付けでマリオ ブロフバー夫婦が原告を辞めるまでの間、原告と被告とはその取引が継続されており、したがって、その間、被告が本件商標を使用していたことは明らかである。

<2> 本件商標は、被告の亡代表取締役が創作し、被告の商標として使用してきたものであるが、原告が、スイス国において、「Cosilan」に「AG」を付加した商標につき登録を得た当時(1984年9月)、原告は、被告が本件商標権を有していたことは知っていた。

<3> 原告の商標はいわゆる製造票であり、被告の商標(本件商標)は販売票である。被告が原告以外から仕入れた商品には検乙第1、第2号証のラベルが添付されているが、これらはいずれも販売票であって、被告の商品であること表示するものである。

第4  証拠

本件記録中の書証目録・証人等目録記載のとおり。

理由

1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)及び2(審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。

2  そこで、被告が、本件審判請求の登録前3年以内に、本件商標を使用したことがあるか否かについて検討する。

(1)  被告は、上記期間内に本件商標を使用したことの一例として、昭和61年3月5日から平成元年2月23日までの間に、原告から購入した原告製品をウールン商会に販売したが、その際、原告の商標が本件商標と殆ど同じであるので、そのまま原告の商標を使用して上記販売をしたものである旨主張する。

成立に争いのない甲第2号証の1ないし7、第3号証の1ないし9、第4号証の1ないし9、第5号証の1ないし7、第6号証の1ないし10、第7号証の1ないし8、第8号証の1ないし8、第9号証の1ないし5(甲第2号証の4、7、第3号証の5、8、第4号証の5、8、第5号証の4、7、第6号証の6、9、第7号証の2、5、7、第8号証の4、7、第9号証の5については、原本の存在も争いがない。)、第60号証、乙第38号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第44号証の2、4ないし8、11、13、15、17ないし19、第45号証の3、5ないし9、13ないし21、23、24、27、29、30、32ないし34、証人岩井泰治の証言、被告代表者本人尋問の結果(後記措信しない部分を除く。)、並びに弁論の全趣旨によれば、被告は繊維並びに雑貨の輸出入及び内地取引を目的とする会社であって、原告が特約店であるウールン商会に綿プリント織物等の原告製品を販売するに当たり、専らウールン商会に原告製品を引き渡すための代理業務及び輸入業務を独占的に行っていたものであり、昭和61年3月5日から平成元年2月23日までの間にも、原告から輸入した原告製品をウールン商会に納入したことが認められる。

しかし、原告製品の上記納入等において、被告が本件商標を使用したことを認めるべき証拠はない。

被告も自認するとおり、上記取引においては原告の商標がそのまま使用されたものであり、また、被告は、原告とウールン商会との取引において本件商標を使用すべき立場にはなく、その必要もなかったのであって、本件商標が原告の商標と殆ど同じであるからといって、原告の商標の使用が本件商標の使用に当たらないことは明らかである。

成立に争いのない乙第1号証の1(ウールン商会の被告宛証明書)中には、ウールン商会が上記期間中被告から仕入れた織物には被告の商標「COSILAN」が付されていた趣旨の記載があるが、上記認定の経緯及び前記岩井証言に照らし、採用できない。また、成立に争いのない乙第39号証には、本件商標につき、「被告の商品であるということで被告の商標として使用したものであります。」と記載されているが、採用できない。

(2)  被告は、昭和61年3月20日から平成元年5月11日までの間に、サン・ミエールから購入した綿捺染織物等を、本件商標を使用して、ヱスターニュートン、ハマ・インターナショナル、キャピタル商会に販売した旨主張し、乙第39号証及び被告代表者本人尋問の結果中には上記主張に添う記載及び供述があるので、この点について検討する。

<1>  乙第2号証の1は、被告のヱスターニュートン宛の、昭和61年3月28日から平成元年3月24日までの間に被告の商標「COSILAN」が付された織物(綿捺染織物地等)を仕入れて販売していたことの平成元年8月3日付け証明願と、ヱスターニュートンの同日付け証明書であり、乙第2号証の2ないし11は上記証明願、証明書に添付されたヱスターニュートン作成名義の物品受領書(以上いずれも写し。以下同じ)であり、乙第10号証の1ないし10、乙第14号証の3ないし12は上記乙第2号証の2ないし11と同内容のものである。また、乙第14号証の1は、平成元年8月3日付けの上記証明事項に相違ない旨のヱスターニュートンの平成6年7月4日付け証明書である。

乙第44号証の3、12、第45号証の2、11、22、28、第46号証の2は、ヱスターニュートン作成名義の上記物品受領書に対応する被告作成名義の請求書である。

乙第3号証の1は、被告のハマ・インターナショナル宛の、昭和61年3月20日から平成元年5月11日までの間に被告の商標「COSILAN」が付された織物(綿捺染織物地等)を仕入れて販売していたことの平成元年8月1日付け証明願と、ハマ・インターナショナルの同日付け証明書であり、乙第3号証の2ないし11は上記証明願、証明書に添付されたハマ・インターナショナル作成名義の物品受領書であり、乙第11号証の1ないし10、乙第15号証の3ないし12は上記乙第3号証の2ないし11と同内容のものである。また、乙第15号証の1は、平成元年8月1日付けの上記証明事項に相違ない旨のハマ・インターナショナルの平成6年7月5日付け証明書である。

乙第44号証の9、14、第45号証の10、12、25、35、第46号証の3は、ハマ・インターナショナル作成名義の上記物品受領書に対応する被告作成名義の請求書である。

乙第4号証の1は、被告のキャピタル商会宛の、昭和61年4月22日から平成元年4月6日までの間に被告の商標「COSILAN」が付された織物(綿捺染織物地等)を仕入れて販売していたことの平成元年8月7日付け証明願と、キャピタル商会の同日付け証明書であり、乙第4号証の2ないし8は上記証明願、証明書に添付されたキャピタル商会作成名義の物品受領書であり、乙第12号証の1ないし7、乙第16号証の3ないし9は上記乙第4号証の2ないし8と同内容のものである。また、乙第16号証の1は、平成元年8月7日付けの上記証明事項に相違ない旨のキャピタル商会の平成6年7月4日付け証明書である。

乙第44号証の10、16、第45号証の4、26、31、第46号証の4は、キャピタル商会作成名義の上記物品受領書に対応する被告作成名義の請求書である。

上記各物品受領書、請求書の「品名及明細」欄には、「COSILAN ブランド」あるいは「COSILAN BRAND」の記載がある。

乙第24号証ないし第30号証の各1、2は、サン・ミエールの被告宛の舶来綿プリント等の納品書(乙第24号証は平成元年2月2日付け、第25号証は昭和63年6月20日付け、第26号証は同年2月3日付け、第27号証は昭和62年7月30日付け、第28号証は同年1月28日付け、第29号証は昭和61年8月6日付け、第30号証は同年2月4日付け)であり、各納品書にはデザイン番号、数量(反数、メートル)が記載されたものが添付されている。

乙第31号証ないし第37号証の各1、2は、上記納品書に対応するサン・ミエールの被告宛の請求書である。

ところで、サン・ミエールの被告宛納品書である乙第24号証ないし第30号証の各1、2に記載されている舶来綿プリント等の納品日、デザイン番号・数量と、ヱスターニュートン等の被告宛の物品受領書である乙第2号証ないし第4号証(枝番省略)に記載されている「COSILANブランド 綿プリント服地」等の受領日、デザイン番号・数量とは整合していることが認められる(但し、物品受領書に記載のデザイン番号には「#J」が付されているが、この「J」は、被告の商号中の「ジャパン」(Japan)の頭文字「J」を表すものとして用いられているものと推測される。)。

しかしながら、次項に説示するとおり、上記ヱスターニュートン等の証明書、物品受領書、被告のヱスターニュートン等に対する請求書、及び、サン・ミエールの納品書、請求書の各記載内容については、たやすく信用することができない。

<2>ⅰ)被告代表者は、ウールン商会から受け取った物品受領書を紛失したため、乙第1号証の2ないし38(乙第9号証の1ないし37も同じ)の物品受領書は、被告において、本件審判請求事件に提出すべく、ウールン商会に対して前記証明願いをするに際して添付するために書き直したものである旨供述している。

ところで、乙第1号証の2ないし38の物品受領書の「品名及明細」欄には、いずれも「COSILAN ブランド」と記載されているが、前記甲第2号証ないし第9号証の各1、第5号証及び第9号証の各2、乙第44号証の2、4ないし8、11、13、15、17ないし19、第45号証の3、5ないし9、13ないし21、23、24、27、29、30、32ないし34によれば、本来の物品受領書の「品名及明細」欄には、「COSILAN’s goods」あるいは「Cosilan’s Goods」と記載されていたものであることが認められる。

また、甲第2号証ないし第9号証の各1の納品書の「品名及明細」欄に記載されている原告製品のデザイン番号と、乙第1号証の2ないし9の物品受領書の「品名及明細」欄に記載されているデザイン番号を対比すると、次のとおりである。

(a) (甲2の1)#966 (乙1の9)#J8966

(b) (甲3の1)#3016/1684(乙1の8)#J83016

(c) (甲4の1)#3003/1684(乙1の7)#J83003

(d) (甲5の1)#3049/1684(乙1の6)#J83049

(e) (甲6の1)#3012/1684(乙1の5)#J83012

(f) (甲7の1)#1684/plain(乙1の4)#J83027

(g) (甲8の1)#1153/1684(乙1の3)#J83026

(h) (甲9の1)#3015/1684(乙1の2)#J83015

上記のとおり、同一の取引に係るものであるにもかかわらず、乙各号証記載のデザイン番号は、甲各号証に記載の本来の真正なデザイン番号と相違しており、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(h)の乙各号証のデザイン番号は甲各号証のデザイン番号の冒頭に「J8」を付したものとなっている。

その他、乙第44号証の2、4ないし8、11、13、15、17ないし19、乙第45号証の3、5ないし9、13ないし21によれば、乙第1号証の10ないし38に記載のデザイン番号も、本来の物品受領書に記載されていた真正なデザイン番号と相違しており、もとのデザイン番号の冒頭に「J5」、「J6」、「J7」が付されているものが多いことが認められる。

上記事実によれば、被告は、本件審判請求事件に提出すべくウールン商会から証明書を徴するに際し、物品受領書の「品名及明細」欄の「COSILAN’s goods」あるいは「Cosilan’s Goods」を「COSILAN ブランド」と書き換えたり、もとのデザイン番号の冒頭に「J5」、「J6」、「J7」「J8」を付したりなどして、本来の真正なデザイン番号と異なるものを記載したりするなど、本来記載されていたものと相違する内容のものを作成したものであることは明らかである。

ところで、上記乙第1号証の8に記載の「#J83016」、同号証の7に記載の「#J83003」、同号証の5に記載の「#J83012」、同号証の3に記載の「#J83026」、同号証の2に記載の「#J83015」の各デザイン番号のうちの「#J」を除いたものと同一のデザイン番号が、サン・ミエール作成名義の納品書である乙第24号証の1、2、請求書である乙第31号証の1、2に記載されており、同様に、乙第1号証の11に記載の「#J81078」、同号証の14に記載の「#J71041」、同号証の16に記載の「#J71008」、同号証の17に記載の「#J71028」、同号証の18に記載の「#J8818」、同号証の22に記載の「#J71028」、同号証の23に記載の「#J8818」、同号証の25に記載の「#J6130」、同号証の28に記載の「#J6718」、同号証の29に記載の「#J6866」、同号証の33に記載の「#J6798」、同号証の34に記載の「#J6652」、同号証の38に記載の「#J5656」の各デザイン番号のうちの「#J」を除いたものと同一のデザイン番号が、同じくサン・ミエール作成名義の乙第25号証ないし第30号証の各1、2の納品書、乙第31号証ないし第37号証の各1、2の請求書に記載されていることが認められる。

しかし、上記乙各号証にウールン商会に納入した原告製品のデザイン番号として表示されたものと、サン・ミエールが被告に納入したとする服地のデザイン番号とが、「#J」(このうちの「J」が被告の商号中の「ジャパン」(Japan)の頭文字「J」を表すものと推測されることは前記のとおりである。)を除く部分において同一のものが多数存在するということは極めて不可解であり、しかも、上記乙各号証に原告製品のデザイン番号として表示されているものは、原告製品の本来のデザイン番号の冒頭に「J5」、「J6」、「J7」、「J8」などを付したものであって、原告製品の本来のデザイン番号ではないことを併せ考えると、乙第24号証ないし第37号証の各1、2の作成経緯及び記載内容の信憑性については強い疑いを持たざるを得ない。

ⅱ)被告は、従業員数名を擁する程度の規模の会社であるが、昭和54年頃から継続的に原告製品を輸入しており(前記乙第39号証、被告代表者本人の供述)、原告、被告及びウールン商会間で1985年3月14日に成立した契約において、被告は、原告がその製品を日本の市場に販売する場合はウールン商会のみに対して行うという取引について監督にあたるものとされていること(前記甲第60号証)、被告は、前記のとおり、原告が日本における総販売元であるウールン商会に製品を販売するにあたり、ウールン商会に製品を引き渡すための代理業務及び輸入業務を独占的に行ってきたものであり、昭和62年には約2億1000万円、昭和63年には約1億6000万円を下らない原告製品をウールン商会に納入しており(前記乙第44号証、第45号証(枝番省略)中のウールン商会宛の請求書)、相当多額の手数料を得ていたものと推認されるところ、乙第44号証ないし第46号証(枝番省略)中のヱスターニュートン、ハマ・インターナショナル及びキャピタル商会宛の請求書に記載されている服地の販売額は合わせて、昭和62年、昭和63年においていずれも100万円前後であり、もし本件商標を使用して上記のような取引を行っていることが原告に判明すれば、原告との関係が打ち切られ多額の利益を失うことになることは明らかであって、そのような危険を冒してまで上記のような些少の取引を行うとは考えにくいこと、及び、上記ⅰ)に認定、説示したところを併せ考えると、乙第2号証の1ないし11、第3号証の1ないし11、第4号証の1ないし8、第10号証の1ないし10、第11号証の1ないし10、第12号証の1ないし7、第14号証の1ないし12、第15号証の1ないし12、第16号証の1ないし9、第44号証の3、9、10、12、14、16、第45号証の2、4、10ないし12、22、25、26、28、31、35、第46号証の2ないし4の作成経緯及び記載内容の信憑性についても強い疑いを持たざるを得ない。

なお、乙第5号証の1は、乙第1号証の1ないし38、第2号証の1ないし11、第3号証の1ないし11、第4号証の1ないし8を添付してなされた、被告から大阪商工会議所宛の、被告の商標「COSILAN」が付された織物を使用販売していたことの平成元年8月10日付け証明願と、同商工会議所の同日付け証明書であるが、上記説示のとおり、被告はウールン商会に対して本件商標を使用して織物を販売したことはなく、また、乙第2ないし第4号証(枝番省略)の記載内容は信憑性を有しないから、大阪商工会議所の上記証明事項を採用することはできない。

ⅲ)乙第40号証は、千代田印刷株式会社の被告宛の、織りネーム(Cosilan)及び下げ札(Cosilan)各7000枚の昭和59年3月28日付け納品書であり、乙第41号証の1、2は上記納品書に対応する同年4月10日付け総括請求書であるが、上記ⅰ)、ⅱ)に認定、説示したところに照らすと、仮に、被告が上記日時ころ、上記織りネーム等を入手したとしても、そのことをもって、上記織りネーム等を用いて被告主張のエスターニュートン等との取引が行われたことを認定することはできない。

<3>  以上によれば、乙第39号証及び被告代表者本人尋問の結果中、被告は、昭和61年3月20日から平成元年5月11日までの間に、サン・ミエールから購入した綿捺染織物等を、本件商標を使用して、ヱスターニュートン等に販売した旨の被告の主張に添う記載及び供述部分は採用することができず、他に、被告の上記主張事実を認めるに足りる証拠はない。

(3)<1>  被告代表者本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第42号証及び第43号証によれば、被告は、平成元年7月ころ、小林織ネーム株式会社に「COSILAN」の織ネームー式を発注し、同月29日にその納入を受けていることが認められるが、上記日時は本件審判請求の登録後であるから、上記事実をもって、被告が本件審判請求の登録前3年以内に本件商標を使用したことを認定することはできない。

<2>  乙第6号証の1、2は、被告が販売した織物を平成元年8月10日に被告会社内において撮影した写真であるとして提出されたものであり、上記写真に写されている女性用の織物には検乙第1号証の下げ札(「CosilaN」、「THE JAPAN MERCANTILE CORP., LTD.」と表示されている。)が付されていることが認められる。

しかし、上記写真の撮影日時は本件審判請求の登録後であること、証人岩井泰治の証言によれば、上記織物はウールン商会のものであり、上記写真の撮影場所もウールン商会内であることが認められることからして、乙第6号証の1、2により、本件審判請求登録前3年以内における本件商標の使用を認定することはできない。

また、乙第8号証の1ないし14は、被告が販売した織物を平成2年11月21日に被告会社内において撮影した写真であるとして提出されたものであり、上記写真に写されている織物には検乙第1号証の下げ札が付されていることが認められるところ、被告代表者本人は、上記織物は他に販売するためにウールン商会から借用したものである旨供述している。

しかし、上記写真の撮影日時は本件審判請求の登録後であること、上記の点についての被告代表者本人の供述には曖昧な点が多く、証人岩井泰治の証言に照らしても信用できないことからして、乙第8号証の1ないし14により、本件審判請求登録前3年以内における本件商標の使用を認定することはできない。

(4)  他に、本件審判請求の登録前3年以内に、その指定商品に本件商標が使用されたことを認めるに足りる証拠はない。

3  以上のとおりであるから、本件商標は審判請求登録前3年以内に、日本国内において使用されていた旨の審決の認定は誤りであり、原告主張の取消事由は理由がある。

よって、原告の本訴請求は正当であるから認容し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤博 裁判官 濵崎浩一 裁判官 市川正巳)

別紙

本件商標

登録第1657773号商標

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自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
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